自動車保険 見積もりの問題の修正

第一に問われるべきは、やはりわが国の金融政策当局の不作為の罪であった。
氷山の一角97年の春に経営が破綻した日産生命の話から始めよう。
契約者の受取額が七割にまで減額されるという処理案が打ち出されたこの事件は、生命保険という商品の中身にあらためて国民の目を向けさせ、懸念の高まりから解約が急増、業界の総資産が減少するという結果をもたらした。
この一件はいったい何だったのだろう。
バブル崩壊後に表面化した信用組合、住専(住宅金融専門会社)、銀行などの経営破綻に新たな一頁が加わった、と一般には受けとめられたであろうが、よく考えてみると、日産生命の場合は、激しい土地投機のつけとして膨大な不良債権が発生、これが直接経営の足を引っ張ったというわけではなかった。
株式バブルの崩壊による含み益の減少は当然あっただろう。
異常低金利が長期化したことによる資産の逆ザヤ運用が主な要因であったことも指摘された。
だが、この生命保険会社という業種が、かつては「ザ・セイホ」の名をほしいままにした機関投資家として、膨大なジャパン・マネーをアメリカに注ぎ込んでいた事実を指摘する人は少なかった。
日産生命の経常危機は、それを氷山の一角として裾野に広がる機関投資家の膨大な為替差損を明るみにだした。
それはとりもなおさず、大蔵省が取り仕切ってきた日本のマネー戦略の敗北を象徴する事件だったのである。
余談になるけれど、生命保険会社という業種は、もとはといえば戦前から通産省(商工省保険局)の所管であり、戦後、アルコール事業と交換の形で強引に大蔵省の所管とされた経緯がある。
佐橋滋元通産次官はこれを「月とスッポンの交換」(『昭和産業史への証言』)だったと述べている。
もし、生保が通産の所管のままであれば、少なくとも日本経済のマネー部門の一角に「風穴」が開き、大蔵傘下の金融村があれほど強国に完結してしまうこともなかったであろう。
資産運用にあたっても、その相互会社としてのディスクロージャーの甘さを逆手にとられ、有無を言わさぬ大蔵省の風圧に、まともにさらされることもなかったであろう。
これは不幸な偶然であった。
70年代の岐路さて、その大蔵省が、護送船団の指揮官として、負うべき責任はどこにあったのだろうか。
短期的な政策のミスとしては、ウォール街に忠実なあまり、日本にバブル経済を発生させ、またその処理を誤ったという点があげられる。
それは誰の目にも明らかで、それだけでも万死に値するが、この政策ミスを、これまでに見てきた日米間の経済関係の流れのなかでとらえると、より根源的な問題として、「日本の債権国化に際してそれに対応するようなマネー経済の枠組みの形成を行わなかった」ことが浮かび上がる。
戦後の高度成長時代には、日本経済は常に経常赤字、資本不足に悩まされ、資金をいかに国内に配分するかが最大の問題で、そのために厳格な為替管理にもとづく円の国内封鎖体制がしかれていた。
しかし、こうしたマネー経済の枠組みは、外資不足時代を過ぎ、高度成長を達成した1960年代をもって役割が終わった。
経常収支が黒字化し、資本輸出を行うようになるということは、日本が、いわば製造業の成長によって用意された新しい舞台のうえに立つことを意味した。
製造業に加え、新たにマネー部門が国際ビジネスに参入する段階にまで達したのである。
70年代に、経常収支の推移などを見て、これからは対外資本投資が本格化するであろうことを予想した国は日本だけではなかった。
いかにして自国通貨の傘下で、影響力を保持しつつ対外的に資本投下を行っていくかが、それら新興債権国の共通の課題であった。
一般に、資本輸入国の企業や政府が、資本輸出国において、その国の通貨建てで起債し、輸入国が発行した債券をその輸出国の貯蓄超過分が吸収する、これがいわゆる資本輸出の基本である。
こうした資本輸出は資本輸出国の国マネー部門に、関連業務を含めて多くのビジネス・チャンスをもたらし、結果としてその国に国際金融センターが育ってゆく。
このように展望されるようになったとき、日本以外の各国はどんなことをしたか。
ドイツの場合は、ユーロ・マルクによる起債を中軸に据えて認め、発行後は債券をドイツ国内のいずれかの市場に上場することを求めた。
実際にはフランクフルトが国際資本市場として育ってゆくことになる。
イギリスでも、ほぼ同様の方法がとられた。
金融立国のスイスでは海外の発行体にも国内起債を原則とし、これを、証券を兼営する三大銀行中心に取り仕切ることになった。
日本の場合はどうであったか。
70年代の変動相場制の時代を迎えて、円の安定のためにも「円の小世界」を展開していくことの重要性がいよいよ高まっていたが、他方で、二度のオイル・ショックが、日本の経常収支の黒字基調を見えにくくしてしまったのは不運というほかはなかった。
ただし、オイル・ショックがなければ、円建て資本輸出への態勢が整っていたかといえば、それもまた大いに疑問であった。
日本の資本市場は、イギリスやドイツやスイスとは異なるシステムを維持していた。
そこで発行される社債は、古くから「安全・高コスト」がその特徴であった。
しかし、70年代に入ると、マネーの国内封鎖体制は相変わらずであったが、安全だがコストの高い社債発行システムをめぐって、旧来のシステムを維持したい銀行と「グローバル・スタンダード」を有利と考える優良企業を取り込みたい証券会社、といったぐあいに、金融村内部の対立が顕在化してきていた。
そこにさらに円の国際化、つまり海外起債体による円建て債の問題が重なるように浮上してきたのである。
厳しい外国為替管理、マネーの国内閉鎖体制を解体することは、それが長期的な国益につながるにしても、金融機関にとっては既得権益の、大蔵省にとっては金融業界への影響力の、解体・消失を意味した。
彼らは、「円の小世界」の現出によって権益を失うよりは、「ドルの世界」を所与として受け入れることを選択した。
そしてそのことが、円が正当な国際的地位を獲得することの妨げとなったのである。
姐保付き社債の呪縛その間の事情をやや詳しく見てみよう。
資本輸入国の政府や企業が、複数の資本輸出国のなかから資金の調達先を選択する場合、どの国の資本市場で起債すれば、価値の安定した通貨で、低コスIの資金を手早く得られるか一をまず考えるであろう。
低コストの資金が簡便な手続きで調達できる市場に、多くの資金需要が集中する。
また、多くの国の政府や企業が、ある資本輸出国の資本市場でその国の通貨建ての債券を発行していれば、その資本輸出国の投資家は、為替リスクのない安全有利な投資先を選択することができるのである。
したがって、再三述べてきた日本の円建て債券市場の未発育という現実は、結局のところ、世界の起債体にとって、なぜ日本の債券市場の魅力が薄かったのかという問題に帰着する。
円という通貨は、基本的に経常黒字国の通貨であるから安定度に問題はない。
むしろそこで大きな問題となったのは、日本の債券市場の特異な歴史である。
債券には常に債務不履行のリスクがつきまとう。
このリスクに対して、たとえばアメリカでは、鉄道債券の発行が盛んであった19世紀後半から、今日わが国で「猛威」をふるっているムーディーズ、格付け機関が、リスクの多寡を判断してランク付けを行ってきた。

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